エド&リーのブログ

未亡人に憧れるゴーストライター。深海魚のような仲間を探しています。結論の出ない話多めです。

落ち込んでいる人を前にどうすれば良いのか

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スキージャンプ混合団体の中継を見ていた。

個人ノーマルヒルでは4位という結果だった高梨沙羅選手。彼女は今回で3回目のオリンピック出場だが、1回目より2回目、2回目より3回目と、私は彼女からどんどんストイックになっているような印象を受けていた。そして、個人ノーマルヒルの試合の前に、彼女が現在拠点としているスロベニアでの生活の様子が放送されていた。その様子も、彼女にとっては落ち着いて生活できる環境のようだったが、やはりストイックというか、完全に私個人が受けた印象ではあるのだが、心なしか悲壮感のようなものが漂っているようにすら見えた。

個人ノーマルヒルの試合でも彼女を応援しながら見ていたが、結果は4位。正直なところスロベニアの選手が強そうだなと思ってはいたのだが、とはいえ勝負の世界。ましてやいつも予想外のことが起きるオリンピックなので、やはり期待はしていた。だから4位という結果になった時は悔しく思ったし、かつてモーグルで活躍した上村愛子選手のことをなんとなく思い出したりしていた。

心打たれる光景

そして昨日のスキージャンプ混合団体の試合。

高梨選手の1回目のジャンプが非常に良く、ジャンプの後の高梨選手からもなんだか手ごたえを感じているような、いつになく自信に満ち溢れているような、嬉しそうな彼女の様子が見られて私も嬉しかった。彼女が気持ちを切り替えて団体戦に臨んでいるように見えたので、結果はどうあれ、2回目も納得のいくジャンプをしてくれたらいいなと思っていた。しかし、ご存知のとおりその後、とんでもない出来事が起こった。

スーツのサイズによる失格とのことで、一体どこの誰に責任があるのかなど、ど素人の私には真相は全くわからないのだが、とにかく驚いた。そして、途中一瞬だけ映された高梨選手がしゃがみ込んでいる姿を見ていたので、その後結果的に2回目に進めることにはなったものの、もう彼女は飛べないのではないかと思っていた。

しかし、信じられないことに彼女はそのような状況の中でもしっかりと自分の役割を果たし、1回目よりはポイントは低かったものの、十分な成績を残した。2回目のジャンプをする前の表情は完全に泣きじゃくった後の人の顔だった。それでもしっかりと前を見つめ、極限の状態の中でジャンプをする姿に私は心を打たれたし、あれほどの状況であってもきちんとジャンプができるというのはやはりプロだと思った。そしてなんとなくメンタルが弱そうだと思っていた彼女の中にある、一本の芯のような、意外とも思える驚異的な強さを感じた。

2回目のジャンプの後、着地するや否やまた泣き崩れてしまった彼女を見て、私も泣いてしまった。本当に言葉にならないというか、彼女を称えたい気持ちや、悲しい気持ち、悔しい気持ち、尊敬する気持ち、驚嘆する気持ちなど、様々な気持ちが入り混じっていた。

私は高梨選手と全く接点もないし、こんなことを私が考えても仕方がないのだが、もし私が高梨選手にとって友達であったり、チームメイトであったり、スタッフであったり、とにかく彼女にとって身近な存在であったとしたら、どうしていただろうと思った。

誰のためにしていることなのか

というのも、ここ最近、親しい人、それほど親しくない人含め、私の周りで落ち込んでいる人、弱っている人を見かけることが続いていたからだ。当然ながら理由や原因は各々違っている。

そして、その度に私は、自分の判断で、出来る限りその人の立場になって考えようとしてみたり、励ましてみたり、時には何も言わずに見守ったり、ということをしていた。それに対して「ありがとう」と少し元気になるような素振りを見せる人もいれば、自分が心配していたよりも実はその人はそんなに落ち込んでいなかったりだとか、その時は励ましても落ち込んだままだが、翌日には意外とケロッとしている…など、反応も様々だった。

私はその度に「自分のとった行動は間違っていたのだろうか」「どうすることがその人にとってベストだったのか」と考えていたのだが、当然答えなど見つからない。なぜなら私もまた、そのような行動をとりながらも「その気持ちは当事者にしかわからない」ということをわかっているからだ。

ではなぜ自分は目の前の人に対して「この人にはこうした方が良いだろう」と考え、行動してしまうのか。本当は、私はその人のためではなく、何か自分のためにその行動をとっているのではないか。これは偽善なのか?など、色々なことを今もまだ考えている。

目の前に落ち込んでいる人、弱っている人がいる時、どうすることがベストなのだろうか。自分の子どもならまだしも、相手は言ってみれば他人である。求められていない限り「どうして欲しい?」なんて聞けるはずもなく、そっとしておいた方がいいと思って何もしないこともあるが、ひょっとしたらその人の力になれることがあったのではないかと後で思ったりもする。かといって行動に出てみると、なんだかその行動が違っているような気がして、余計なお世話だったのかなと後悔したりもする。一体どうすればよかったのだろう。どうすればいいのだろう。

こんな悩み、当事者の苦しみや悲しみに比べればとてもちっぽけなことではあるのだが。

ともかく、高梨選手は私のような一般人には想像もつかないくらい強い心を持っていると思うが、同様に、想像もつかないくらいのプレッシャーを感じ、想像もつかないくらい心に深い傷を負っているはずだ。今はひとまずゆっくりと休んで欲しい。そして、一日も早く彼女に心から笑える日が来ることを願っている。

雪風

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