エド&リーのブログ

未亡人に憧れるゴーストライター。深海魚のような仲間を探しています。結論の出ない話多めです。

【絵本紹介】メロウ-アイルランド民話-

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メロウ -アイルランド民話-

再話・絵:せな けいこ

出版社:ポプラ社

絵本と私

私はもうかれこれ4~5年ほどほぼ毎日子どもたちが寝る前に絵本を読んでいる。

ほとんどは図書館で借りてくる絵本で、たいていは毎月その月の仕事が片付いて次の発注が来るまでの束の間の休日に図書館に行き、大量に借りている。多分絵本に対する思い入れは私の方がだいぶ強く、たまに子どもたちと図書館に行っても、子どもたちより私の方があれこれと借りてしまうという始末だ。

ちなみに横浜市の図書館は今月から1人6冊まで借りれていたのがさらに10冊まで借りて良くなった。大変喜ばしいことではあるのだが、かといって子どもたちの分と合わせて30冊も借りたところで読み切れるのかという話である。

絵本はどれひとつとして印象に残らないものはなく、一度読んだ本は覚えているのだが(忘れていて読んでる途中で思い出すこともあるが…)、ここではその中でも特に印象に残った絵本を紹介していければと思う。

結論がないからこそ印象に残るお話

今日ご紹介するのは、せなけいこさんの「メロウ」だ。せなけいこさんといえば「めがねうさぎ」や「ねないこだれだ」などで知られる切り絵を使った作風で知られる作家さんで、きっと多くの人が絵を見れば「見たことある」となるはずだ。

私はわりと気に入った作家さんの絵本を網羅したくなるタイプで、これまでにも色々な作家さんの絵本を連続して借りまくってきているのだが、せなけいこさんの絵本もそのひとつで、この「メロウ」もその網羅中の作品のひとつである。

このお話はアイルランドの昔話である「メロウ」という人魚の物語をせなけいこさんが作り直した(?)ものらしく、あらすじとしてはジャック・ドガティーという漁師がメロウという謎の生物に出会い、酒を一緒に飲んだりして仲良くなるんだけどある日突然メロウが姿を見せなくなる…というものだ。ネタバレになってしまうのであまり細かいことは書けない(いや書いてしまったか)のだが、とにかく最終的に「え?あれ?続きは…?」みたいな終わり方である。

絵本を数多く読んでいると、たいていは「めでたしめでたし」的な、めでたくなくても何かしらの結びがあって終わるのだが、たまにこういう「え?なんだったの?」的な、フランス映画的なぼんやりとした終わり方をするものに出会うことがある。なお、私の経験上このような終わり方をする絵本は海外の作品に多いように思う。

実際にこのメロウを読み終わったあとも、子どもたちも私も「え?」となり、娘に至っては「ちょっと待ってあと1ページあるよね?」などと言っていた(結びがあると思っている)。

結びがないとモヤっとする部分もあるのだが、この作品は途中のお話や絵もなんだか不思議なので、結びがないことでさらに不思議な世界が作り出されているように思う。「結果どうなった」というものがないからこそ、「ひょっとしてメロウがある日うちの近所の川にも現れるかも(タマちゃん的な感じで)」といった夢を持たせてくれる気がする。

なお「メロウ」とは英語で「甘美な」「丸みのある」「柔らかい」といった意味や「ほろ酔いの」的な意味があるらしいが、古アイルランド語では「海の歌い手」という意味だとか。そしてアイルランド語には「人魚」を意味する言葉が幾つかあるらしい。そして私の中で「メロウ」といえば椎名林檎の初期の方の曲だ。「メロウな曲」とかいう表現もあるし、とにかく「メロウ」ってなんだかちょっと大人っぽいような、格好いい響きの言葉だなと前々から思っている。

ということで、読まないとなんのこっちゃという話かもしれないが、絵も素敵だしお話もなんだか不思議なので、気になった方は是非読んでみていただきたい。

メロウ

メロウ

  • 椎名林檎
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes