エド&リーのブログ

未亡人に憧れるゴーストライター。深海魚のような仲間を探しています。結論の出ない話多めです。

BBAの主戦場から【前編】

先日、いつも行く街で午前と午後に予定があったので、いつもの店のいつもの2人掛けのテーブル席で昼食をとっていた。

すると、半分食べ終わった頃、人ひとり通れるくらいの通路を挟んだ反対側の2人掛けの席に男女のカップルらしき2人が座った。最初は特に気にせず目の前にある自分のご飯に集中していたのだが、私から見て斜め前にあたる場所に座った女が話し始めた途端に私のご飯への集中力は一気に失われた。

ぶりっこな女

「うわっ」と私は思った。ゆうこりん小倉優子)の喋り方をイメージしていただければ問題ない。その声、喋り方、ほぼほぼゆうこりんなのだ。まぁ一言でいうとぶりっこだ。ぶりぶりざえもんだ。

何せ距離が近いので私もジロジロ見られないし、あくまでも視線は自分のテーブルに集中させようと頑張っていたのだが、男が頼んだビールが届いた数秒後、私の中の「ジロジロ見ちゃダメ」という掟は脆くも崩れ去った。

「ぷはぁぁぁ~♪生きててよかったぁ~♪」

もう私の脳内にはザコシ(ハリウッドザコシショウ)の「は?」が鮮明に再生された。もはやザコシの生霊が私の前の席に降臨していたといっても過言ではないだろう。いや、別にいいよ、人それぞれだから。美味しかったんだよね、彼からもらったビールがよ。でも私はたかが昼のビールごときで「生きててよかったぁ~♪」なんていう女は信用できないね。いや、でもひょっとしたら普段すごく虐げられた生活を強いられているのかもしれな…ってそんなわけあるかーい。

ということで、私は思わず「え、どんな顔してんの?ゆうこりんなの?ゆうこりんだったらまた話は違ってくるよ(ちなみのその店は焼肉屋ではない)?」と、極力顔の角度を動かさない状況で0.2の視力をフル出力させてその女および男を見たのだった。

視力フル出力で得た情報

女は歳はおそらく20代後半…27歳~31歳くらい。痩せよりの普通体型。顔は中の上(どの面下げて言うてんねん)、特に癖のない顔、化粧はそれほど頑張ってない。髪型もごくごく普通。服装は白いフレンチスリーブのブラウスを大き目のギンガムチェックのロングスカートにイン。靴は若い子がわりとよく履いてる厚底っぽいスニーカー。鞄は私が持っているのと同じロンシャンらしき旅行鞄と小さいバッグを持っているが、ロンシャンの鞄は「私なら絶対その色選ばんわ」っていうくすんだ色のやつだ。髪型、メイク、服装、持ち物から総合的に判断して彼女はおそらくそれほどファッションに詳しくはないだろう。

男については私の位置からだともう首を70°くらい左にひねらないと無理だったので、あまり確認はできなかったが、ピタっとしたポロシャツかTシャツ(Tシャツの場合は十中八九Vネックだろう)に白いアンクル丈のピタっとしたパンツを履いていた。細身で髪は短かったと思う。おそらくそんなに身長は高くないだろう。女と同様に旅行鞄を持っていて、旅行鞄の上にクラッチバッグが置いてあった。歳はおそらく30代前半…29歳~34歳くらいだろう。おそらくそこそこの収入はあると思う。なんとなく。

とまぁそんな視覚情報も得つつ、私は目の前の半透明のザコシと一緒に食事を続けたのだが、女の話し声が耳に入ってくるのなんの。私が女の声に集中しているとかじゃなくて、男が基本的に反応が薄い、というかしょうもない反応しかできてないのだ(失礼すぎてごめん)。

一寸先は私

女は運ばれてくる食べ物を口にするたびに「うう~んん!」と唸り声をあげる。もうね、そこまで反応するようなもの出てくる店じゃないから、この店。あんたらが頼んだその定食1100円だから。ていうかもうね、卑猥だよその唸り声。心理的な公然わいせつでタイーホです。などと思いながら私は半透明ザコシと引き続き黙食を続けた。そしてまた女は窓の外を行き交う人たちを見ながらしゃべり続ける。

「なんかぁ~。職場に育休明けの人がいるんだけどぉ~。子どもが生まれる前はすごいおしゃれな人だったのにぃ~。育休から戻ってきたらなんかもう自分の服装なんてどうでもいいみたいになっててぇ~。子どもが一番、みたいなぁ~」それに対して男は、「仕事と子育てと頑張ってるんだね~大変だよね~」みたいな、ごく普通の反応。そして女はさらに話を続ける。

「う~ん。でもなんかすごいけどぉ~。なんだかなぁ~みたいなぁ~。しかも私のまわりの結婚した人ってぇ、みんな子どもができると旦那さんの悪口すごい言うんだよねぇ~。ほんとにみんなずっと言ってるぅ。あんなにラブラブだったのに、えっって思うぅ~」

…そうだね。そのとおりだよ。子どもが一番になりますよそりゃ。旦那はほっといても死なないけど子どもはほっとくと死にますから。自分の服は去年の服着てても問題ないけど、子どもの服はは買わないとないのよ。ゼロ~なんですよ。親が買わなきゃ真っ裸なわけですよ。服着てねぇって虐待で通報されるわけですよ。だから優先順位は当然子どもになるわけですよ。自分の服とかゆっくり選んでる時間がないのよ。

あと、旦那の悪口は言わない人もいるよ。でもね、お前あなたもそうならないとは限らないよ。5年後には目の前のその男の悪口言ってるかもしれないよ。私だってお前あなたくらいの頃はこんな未来が待っているとは思わなかったんだぜぇ…。人生いろいろあるんだぜぇ…。

などと思いながら、私は半透明ザコシと食事を済ませ、さっさとその店をあとにしたのだった。

しかし、私はその時、先月仕事で書いていた婚活に関する記事のことを思い出していた。「あぁ、でもきっとあぁいう女が選ばれるんだろうなぁ…」と。ありがちな話ではあるが、婚活記事について調べ物をしていた時に得た馬鹿馬鹿しくも有益な情報の数々を、頭の中で反芻していたのだった。