エド&リーのブログ

未亡人に憧れるゴーストライター。深海魚のような仲間を探しています。結論の出ない話多めです。

「じゃない方の人」の美学(キリンジ「千年紀末に降る雪は」より)


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もうすぐクリスマスですね。

皆さんにはお気に入りのクリスマスソングはありますか?

私はマライアキャリー一択です。嘘です。

私のクリスマスソングといえば、この、キリンジの「千年紀末に降る雪は」一択です。

この曲のリリースが2000年なので、もう20年くらいは毎年この曲を聴いているということになります。

今日はこの曲について、というよりは、この曲の自分なりの世界観に交えて、毎年考えていることをゆったりと書こうと思います。

考察はしない派

私は音楽は昔から好きなものの別に詳しいわけではなく、好きなジャンルもどっちかというとロック寄りではあるものの、ダンスミュージックも好きだし、無名なアイドルの曲とかでもいいと思ったら聴くので、わりと間口は広い方だと思う。

ただ、割合的には9:1くらいで圧倒的に邦楽の方が多くて、多分それは歌詞に興味があるからだと思っている。なので、仕事で記事を書く時はいつも一切音楽は聴かずに書いている。特に邦楽の場合は意識が完全に歌詞に引っ張られてしまうからだ。

そして、私は歌詞に興味はあるのだが、イメージはしても「この歌詞はこういう意味だろう」という解釈をしたり、解説などはしない派で、そういう記事もあまり見ない。

理由は、ただなんとなく自分が受け止めた感覚でその曲の情景みたいなのを脳内再生したい、というのと、自分の大学時代の経験が関係している。

そのことについてはさっきまで1000文字くらい書いていたのだが、長すぎたので消した。大学の時の話はまた別で書くとして、とにかく学生時代、やたら作品に対してうんちくを垂れなければならない学科にいたので、その反動みたいなものである。

キリンジについて

「キリンジ」はご存知の方も多いと思うが、もともとは兄・堀込高樹と弟・堀込泰行によるバンドで、2人とも歌も唄うし、曲も作る。2013年に弟の方が抜けてしまい、バンド体制でお兄ちゃんの方が「KIRINJI」をやっていたが、バンドメンバーも抜けたらしく、今はお兄ちゃん一人で活動しているっぽい。

というのも、私も兄弟2人体制の時はライブに行ったり握手会に行ったりしてたくらい好きだったのだが、子どもを産んだあたりから音楽から疎遠になっていたので、最近のことは良く知らないのである。

彼らの音楽は聴いてもらえばわかると思うが、音楽自体はお洒落だし、声も美しく(特に弟の方は小田和正とか財津和夫の声と聴き間違えること多々あり)、わりと万人受けするタイプだと思う。ただ、どちらの作る歌詞も独特で、個人的には特にお兄ちゃんの方の歌詞は変なのが多いと思う。神話っぽくもあり、毒々しさもあり、変態チックというか…。

実際、いつぞやに行ったライブの時もお兄ちゃんの方が「温暖化とか言ってるけどエコバッグなんて意味ねぇよ」みたいなことを斜め後ろくらいから言ってて、やっぱ変な歌詞書くだけあって面白い人だな~と思った記憶がある。

「千年紀末に降る雪は」について


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ようやく本題に入る。「千年紀末に降る雪は」は、お兄ちゃんの堀込高樹が作詞・作曲をしていて、歌は弟がメインで唄っている曲だ。

トップの動画はライブ音源だが、↑の動画はCD音源なので、とりあえずCD音源を聞きながら次の歌詞を読んで欲しい(※はてなはJASRACの管理楽曲であればブログに掲載できるので安心してください)。

「千年紀末に降る雪は」

戸惑いに泣く子供らと嘲笑う大人と
恋人はサンタクロース 意外と背は低い
悲し気な善意の使者よ

あいつの孤独の深さに誰も手を伸ばさない
歩行者天国 そこはソリなんて無理
横切ろうとするなんて気は確かかい?
「赤いオニがきたよ」と洒落てみるか

遅れてここに来たその訳さえ言わない
気弱なその真心は哀れを誘う
永久凍土の底に愛がある
玩具と引き替えに何を貰う?

My Old Friend、慰みに真っ赤な柊の実を ひとつどうぞ
さあ、どうぞ

砂漠に水を蒔くなんて おかしな男さ
「ごらん、神々を 祭りあげた歌も、貶める 言葉も今は尽きた。」

千年紀末の雪に 独り語ちた

君が待つのは 世界の良い子の手紙
君の暖炉の火を 守る人はいない
永久凍土の底に愛がある
玩具と引き替えに 何を貰う?
My Old Friend、慰みに真っ赤な柊の実を ひとつどうぞ
さあ、どうぞ

帝都随一の サウンドシステム 響かせて
摩天楼は夜に香る化粧瓶
千年紀末の雪!
嗚呼、東京の空を飛ぶ 夢を見たよ

君が待つのは 世界の良い子の手紙
君の暖炉の火を 守る人はいない
この永久凍土も 溶ける日がくる
玩具と引き替えに 都市が沈む
My Old Friend、慰みに真っ赤な柊の実を ひとつどうぞ

知らない街のホテルで 静かに食事
遊ばないかと 少女の娼婦が誘う
冷たい枕の裏に愛がある
夜風を遠く聞く 歯を磨く
My Old Friend、慰みに真っ赤な柊の実を ひとつどうぞ
さあ、どうぞ

ん~、いい曲!

この曲は多分キリンジの数ある楽曲の中でも歌詞というか世界観的な面で有名で、星野源などのアーティストや、色々な人が色々な解説をしているので、「どういう意味?」と思った方は調べてみて欲しい。この曲に関する記事はかなりあると思う。

曲の美しさも去ることながら、もうどこを取っても素晴らしい歌詞としか言えないのだが、

「恋人はサンタクロース 意外と背は低い 悲し気な善意の使者よ」

「帝都随一の サウンドシステム 響かせて 摩天楼は夜に香る化粧瓶」

「君が待つのは 世界の良い子の手紙 君の暖炉の火を 守る人はいない」

「冷たい枕の裏に愛がある 夜風を遠く聞く 歯を磨く」

もう文字を見ているだけで泣ける。

本当にどうしたらこんな言葉の組み合わせができるんだろうと不思議に思う。

ここまで思いっきり私の感情だけで書いてしまったが、今この記事を読んでくださっている方はこの曲と歌詞についてどんなイメージを持たれただろうか。

「じゃない方の人」の美学

そもそもキリンジの曲にはチラホラ「寂しい男(というかオッサン)」を髣髴とさせる人が多く出てくる(と個人的には思っている)のだが、私はなんだかこの曲を聴いていると、クリスマスイブに仕事をしていたりして、本来皆が盛り上がっている時に盛り上がってない「じゃない方の人」の美学みたいなものを感じるのだ。

それはクリスマスイブに限ったことではなく、日々の生活全体、人生全体にも当てはまるかもしれない。

例えば、自分の経験から言うと今まで生きてきて、恋人と過ごすとか、自分がメインでクリスマスイブを過ごした回数は多分40年間で5回あるかないかくらいだと思う(子ども時代は除く)。

ここ数年はひたすら盛り上げ役に徹し、夫(仮)は早々に寝てしまうので、私がサンタ役になりプレゼントなどを用意し、セッティングしてきた。

学生時代、独身時代も、友達や彼氏と過ごしたことは1、2度くらいはあったかもしれないが、ほとんどの年は仕事やバイトをしていた。

日々の生活でも私はモテ女でもなんでもないので、自分がチヤホヤされるようなことなんてまずないし、実家もかつて借金まみれになった貧乏だし(これについては後日記事にする)、人生においても私は思いっきり氷河期世代で、「芸大って書いた時点でほぼアウト」みたいなのが当時は当たり前だった。

就職した人なんてほんの一握りで、フリーターになることに何の疑問も抱かなかった。

同世代の女性で正社員として新卒からずっと働いている人もいるが、私が知る限りそんな人は極めて少数派だ。芸大時代の友人などほぼ全員消息不明である。

つまり、基本的に「じゃない方の人」の道を歩んできているのである。

ただ、なぜか不思議とそんな「じゃない方の人」の生き方もそんなに嫌いじゃないのだ。

そのせいで苦しい思いをしてきたこともあるし、今だってバブル期を経験した人の話とか、その頃の考えが残っている一部の人の話なんかを聞くと正直反吐が出そうになるが、なぜか反対に「じゃない方の人でよかった」と思ったりもするのだ。

話を曲に戻すが、この曲は明らかになんだか寂しいことになってしまったサンタについて書かれている。

彼は、自分の孤独や寂しさといった現実を受け入れながらも「真心」や「愛」といったものを捨てない信念のようなものを持ちながら、寡黙に実直に生きているのだ。

そして、それをそっと見守る、自分を知る仲間がいたりなんかもする。

日の目を見ることはなくても、そこは寂しいだけの場所じゃない。

夜空を見上げるばかりの人生でも、隣に目をやると、地上には同じように夜空を見上げている人たちがいる。

なんだかそんな世界を唄っているような気がして、私はこの曲が大好きだ。

結局また何が言いたいのかよくわからなくなってしまったが、私はこの曲を聴くたびに、そんな「じゃない方の人」の美学を感じるのだった。

(ほんとうによくわからない終わり方でごめんなさい)

 

千年紀末に降る雪は

千年紀末に降る雪は

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