エド&リーのブログ

未亡人に憧れるゴーストライター。深海魚のような仲間を探しています。結論の出ない話多めです。

コーヒーレディーはマルドロールを駆け抜けて 13 

前回の話↓

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冬は終焉に向かって

季節は冬。季節が変わろうとパチンコ屋に来るお客さんが変わることはない。変わることといえばホットコーヒーの注文が増えることくらい。

平日は大学に行くが、1回生(1年生)は哲学とか英語とか一般教養系の授業が多く、自分の学科の授業もまだ造形原理とか〇〇概論とか、専門性の高いものは少なく、退屈だった。全く音楽の道に進みたくなくても全員強制的に音楽スタジオのある教室に行って講義を受けたりだとか、映像に興味がなくても高額なカメラを持ち帰って短編の作品を作らないといけなかったりとか、大学の方はまさに「下積み」の状態だった。

2回生・3回生になると、一般教養の単位が取れていれば自分の学びたい分野の授業を選択できるという仕組みではあるが、私の場合、好きな授業を選択しつつも、3回生は週の半分はバイトに行っていて、4回生に至っては週に1回くらいしか大学に行っていなかった気がする。

話が逸れてしまったが、まぁそんな感じで、大学1回生では特にこれといったこともなく、楽しい時間といえばクジくんに会えるバイトの時間という日々が続いていた。クジくんからは彼が作ったというドラムンベースのミックスMD(?)をもらったりして、少しずつではあるが、以前よりもより仲は良くなっていた。

入れそうな日には積極的にシフトに入り、たまに社長の車に乗って1時間以上かかる遠くの店舗までヘルプに行ったりしながらせっせと働いたおかげで、当初30万ほどしかなかった私の貯金は年を越すころには100万円を超えていた。

そもそも、バイトをしなければいけない理由は、仕送りが少ないことと、一日でも早く6畳も満たないあの狭い部屋を出るための資金作りであった。学生が住むような部屋で、しかも次に引っ越そうと思っていたのは大学駅のある喜志駅の隣の古市駅という、ちょっとしたターミナル駅のような場所である。大阪市から羽曳野市への引越しになるので、針中野の部屋と同じような金額でも広い部屋に住むことができた。

引越しをすると当然バイト先のパチンコ屋まではかなり遠くなり、自転車で通うことはできなくなる。通勤時間を考えると結構無理があるし、交通費もかかるので社長サイドにとっても微妙なところである。

引越しをしてバイトを辞めればクジくんには会えなくなるけど、それはバイト上の話であり、すでにクジくんと連絡先を交換している私にとっては、もしクジくんと上手くいくという道があるのであれば、引越しすることはそれほど障壁にはならないと考えた。

そしてひとまずバイトは辞めず、しばらくは電車で土日だけシフトに入る形で、私は大学の後期が終わる2月頃、針中野から遠く離れた古市駅の新しいアパートに引っ越した。

もちろん敷金や礼金は全て自分で貯めたお金である。引越し後の春休みにイギリスに旅行に行くほど、貯金は貯まっていた。

クジくん、新居に来る

私には幼稚園からの幼馴染みのマミちゃんという親友がいて、マミちゃんは高校を卒業してから一度マミちゃんのお父さんが働いている結構な大企業で働いていたが、性格的に仕事内容が合わず、その頃にはもうフリーター生活を送っていた。

マミちゃんは実家暮らしだったので私の地元である兵庫のとある町に住んでいたわけだが、めちゃくちゃフットワークが軽く、車の運転が上手だった。というか免許を取ってすぐに乗り回していた。

しかも髪型をアフロにしたと思ったら坊主にしたり、タトゥーを入れたり、私よりも芸大生っぽい感じの子だった。しかし、顔は可愛く、情にもろく、男の人に優しいので常に彼氏がいるような子だった。現在は落ち着いてきているが、当時はヤンキーではないものの、相当やんちゃだった。

中学までは同じだったが、高校は違ったので一度疎遠になりかけたものの、高二くらいの時に中学の同級生が事故で亡くなり、その通夜に一緒に行ったことからまた仲が良くなったのだった。

マミちゃんは当時いわゆるピックアップトラックと呼ばれる感じの、ラッパーとかが乗っていそうな真っ赤な車(後ろに大きな荷台がある車)に乗っており、私の引越しもその車を使って、男友達に手伝ってもらいながら自力でやったわけだが、その後もその車に乗って遊びに来てくれた。

あの頃の私たちはまさに青春の最中にいた。夜中に音楽を聴きながら煙草をふかし、兵庫や大阪の街を車で駆け巡ったりしていた。「2人なら無敵」そんな勢いがあった。

そしてそんなマミちゃんが大阪に遊びに来てくれた時に、マミちゃんがクジくんに会ってみたいという話になり、クジくんを私の新居に呼んでみることになった。

ここまで書いたとおり、クジくんはDJをやるような男であり、仲間との付き合いを大切にするノリの良い男である。時間は夜であったが遊びに来てくれるということで、どこかの駅でクジくんをピックアップして、クジくんが私の新居にやってきた。

そのとき何を話したかとか、何をして過ごしたのかとかは全く覚えていないが、マミちゃんもノリの良い子なので、私たち3人は楽しい時間を過ごしたことだけは覚えている。

そして私たちはクジくんと3人で記念写真を撮った。もちろんどさくさに紛れてクジくん単体や私とクジくんのツーショットなどを撮ったことはいうまでもない。

そのとき撮った写真はすぐに現像して、私の宝物になった。